―――終わらない弱っちい夜―――



居場所など無く そう 涙の零れ溜たまる掌などある訳も無く
千重の言葉に沈み 一重の言葉に浮かびます
私の宿るべき傘は無く 月に濡れ声は無く
光は霞にようで 照らす道も無いのを知ったのは 本当に最近だった

在り続けるというのは無理なコトで 変わらないというのも大変なコトで
立ち尽くす瞬きの中 握っていた白い手はもう無いなんてのは日常
鋭すぎる矛と 堅すぎる盾と 共に軒先に並べるのはよくあるコトで
愛しすぎて裏目に出るのは サイコロの目が当たらないよりありふれたコトで

私はここに居ます 私はここに居ます
時が変わり 日が変わり 月が変わり 年が変わり
世が変わり 心が変わり 涙の意味が変わっても
鬱蒼とした痛みを抱きしめて 私は終わらない唄を数えます

陽が落ちて 星が落ちて 月が落ちて また陽が落ちて
華が落ちて 葉が落ちて 雪が落ちて また華が落ちて
どれもこれも 私にとっては闇でしかなくて
届かないと知っていながら 名前を呼ぶ
届かないと判っているから 手を伸ばす

自分を慰めるのを辞めたのは とっても昔のコトで
諦めるのを辞めたのは 取り返しがつかなくなった後で

一人で思い続けるのはとても疲れるコトで
尋ねたくてもソレは無理なコトで 壊れてしまうのが恐いから
君が笑ってくれるだけで満足できたのは 割と前の話で
きっと こんなに淋しい夜は来なかったと思う
静かすぎて痛い夜

まだ愛せるのかなって疑ったのは つい最近の話で……




←「未来の忘れ物」へ
Copyright(C) KASIMU/Fenrir all rights reserved.