―――クリスマス・エントランス―――



街角に蹲る 世界の欠片を白が埋め尽くしてく
「ねェ 俺はここに居るから」
一雫 頬に触れた雪が融ける
白い息 生きてるんだなってワカる
薄く光の落ちてゆく街は恐いくらいに静かで
空を見る 灰色の雲海 注ぐリリィ・ホワイト
年に一度だけの夜 目を閉じても 息を止めても ソリはまだ走らない

コートに積もった粉雪を払う マフラーに首を埋めて目を閉じる
「ねェ いつから夜が来たのかな」
遠く 鐘の音が白へと染み込む
「ねェ 君も何処かでこの夜を見てるのかな」
街に佇む 意味を失った十字架の群れ

通りを見る 白と白
二人 笑いあってる恋人達
取って付けたような夜 でも縋りたいと思う
痛いくらいの淋しさを流して

月も空も見えない
心そのまま 逆らうことなど止めて白く染まれ
笑いあって抱き合えることが幸せなら 真っ白な夜に沈んでゆきたい
添えるコトバも花も石も無いけど
「だけど ねェ ここに居場所があるから」
書けないメール 破り捨てて散らす
飲み込まれてゆく細雪

熱い涙 一雫 頬に抱きついた白が溶ける
靴はもう 雪に埋もれていて
歩き去った跡 白いクツシタのよう……




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