Song is Magic


 歌は魔法

 その歌を語るは語り部たち

 彼らが語る数多の歌

 それはときには激しく ときには穏やかで

 いくつもの悲劇が繰り返され 
 やりきれない怒りが行き交い
 それでも喜びに満ちている
 決して途切れぬ天使の歌声

 それは大切なものを守るために 血を吐きながら戦った少年であったり
 最後まで奇跡があることを信じ続け それを叶えた少女であったり
 すべてをかなぐり捨ててでも 平穏を求め続けた英雄であった 

 その全てに永遠の一瞬が刻み込まれている
 永久に消えぬ神々が奏でし旋律


 人の心を唯一 真に動かせるのは魔法
 それを歌い続ける者は語り部
 故に語り部たちは「魔法使い」と呼ばれる

 ある語り部が言った

「本物の歌に音は必要ない
 耳が聞こえぬ者にも 言葉がわからぬ者にも
 等しく意味の分かる歌こそが本物なのだ」と

 彼はそれを今も探し続けている
 見つからないと分かっていても
 それが彼が語り部である意味だから

 彼らは自らが知る歌を語り続ける

 幼きころ聞かされた幾多の歌
 その魔法にかかった者たちが語り部となり
 「魔法使い」となり新たな「魔法使い」を生む

 全てが終わるとき
 全ての歌は巨大な力となる
 そう 偉大なる魔法として

 ある語り部が言った

「力はそれが本当に必要になった たった一度だけ使えばいい
 それで事足りるわ 私たちが歌を語るのは そのための準備なのよ」

 そして彼女はまた歌を語り始めた
 全ての人々が歌を語るために
 それが彼女が語り部である理由だから


 歌は魔法

 もっとも力が弱く 故に最強であるそれは

 歌うことから始まるという

 いつの日か世界の全ての人々が

 歌を語ることを彼らは望んでいる


 全てが始まりるのとき

 歌が奏でられた 力強い世界の旋律が

 最初の語り部はその歌を語り始めた

 世界で最初の魔法として

 その歌を知る語り部は今はいない

 そして 誰もがその世界の歌を探し求めている

 それが歌が魔法である意味でもあるのだから





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