VALUE OF TRUST
PROLOG
これは後の語り部によって語られる物語
奇跡があることを信じ それを叶えた少女の物語
今 それを語ろう───
人は信じるに足る存在か?
信頼に価値はあるのか?
疑わぬことは美徳なのか?
奇跡は───あるのだろうか?
「なぁ、ティナ。昨日お前の家に泊まってった傭兵を村長は雇うと思うか?」
「わかんないよ、そんなの。でも、この村にいてくれたら嬉しいな」
ここは山間にある、ごくありふれた平和な村……「平和」の意味が何か、ということはこの際
おいておこう。
「なんで?」
少女の発言に少年は首を傾げる。なにがうれしいのか、さっぱりわからない。
「わたしにもわからないけど、なんか嬉しいの」
「お前さ、人を信じすぎるといつかバカ見るぞ?少しは疑ってみろ」
「やだよ、そんなの。それにおじいちゃんが言ってた。『人を信じよ、人を愛せ』って。信頼の
価値は確かにあるんだよ?」
「……まあとにかく、雇うにしたって金がいるだろ?この村にそんな金があるわけないだろ。
それにあの傭兵、怪我してたんだろ?役に立つのか?」
「うん……治るのに最低でも2週間ぐらいかかるみたいだけど、あの人両手使えるみたいだから
きっと大丈夫だよ」
「その発言の根拠は何なんだ……でも、2週間っていうと結構深い傷じゃないか……お、
終わったみたいだ」
少女は窓を覗き込み、家の中を窺う。しかし、そこには誰もいなかった。
「……あれ?」
「ティナ、それにルック。何をしておるのだ?」
「あ、あああああああそそそそ村長!?ええええっと、こ、こ、こ……」
少女───ティナは後ろから声をかけられ、手をバタバタさせながら家の中を覗いていたこと
を言い訳しようとする。しかし、言い訳どころか言葉にすらなっていない。
「村長、話は終わったんですか?」
少年───ルックは慌てて支離滅裂になっているティナを無視して、村長にさきほどの話題の
ことを問う。
「うむ、そのことなのだが───」
「───傷が癒えるまでの間滞在しても構わない、でしょう?村長殿」
村長の言葉を遮り、青年が割ってはいる。
「う、うむ。ただし、グンニル殿には魔物や夜盗の撃退はしてもらうがな……ティナ」
「え!?あ、はいぃ!!」
「……その間、お前の家にいてもらうことになるが、依存はないな?」
「はい!もちろんです」
ティナはさっきの慌てが残っているのか、少し声が上擦ってしまっている。
「よろしく頼む」
「はい!」
青年───グンニルが軽く会釈すると、ティナは元気よく返事をした。
「ティナ、元気がいいのは結構だが家を開けっ放しでいいのか?」
「……あ……す、すぐに戻ります!」
ティナは大急ぎで自分の家に走っていき、その途中でこけた。
その後ろ姿をみながら、グンニルは呟いた。「いつもああなのか」と。
「いつもああなんですよ」
ルックはグンニルの呟きに応じるように証言する。
「そうか」
ティナ・ナッツェ───この平凡な村に住む少女である。親はすでに亡く、今は一人
で生活している。
親がいないことを感じさせないほど明るく、いつもポジティブで人を疑うことを知らない、
純真な少女。少しだけ、天然ボケである。
新緑色の長い髪が美しく、ちょっとした村のアイドルとなっている。
本当にどこにでもいそうなごくごく平凡な村娘───それがティナ・ナッツェである。
この少女が後に大きな奇跡を起こし、世界の運命を大きく変えることとなる。
これがその少女と“代理人”との出会い───運命の始まりであった。
あとがき
どうも、はにわです。
えー、日訳すると「信頼の価値」の序章です。序章ってどう書けば良いんだ(泣)
ファンタジーなんで、意味不明な単語がずらずら出てくるかも知れませんが、気にしないで
ください。その都度解説しますんで。
ちなみにこれのもととなっているのは「Song is Magic」の「最後まで奇跡が
あることを信じ続けそれを叶えた少女」です。
……これからどうしよう?(爆)ちなみに「MOON RHAPSODY」とのリンクあり。
では、また。
キャラ設定(恒例だなぁ……)
ティナ・ナッツェ
年齢:16歳 身長:157cm
新緑色の髪(この世界でも比較的珍しい)が特徴的な平凡な少女。
この話の主役は彼女である。
グンニル・ヌァザ
年齢:19歳 身長:176cm
傭兵の青年。“代理人(エージェント)”と呼ばれる存在でもある。
もう一人の主役ですがね。
用語解説
傭兵:ぶっちゃけた話、WAの渡り鳥のようなものと考えて間違いないです(爆)実際に
戦争に身を投じている人もいますし、賞金稼ぎをやっている人もいます。基本的に個人で活動して
いるようです。
信頼の価値:この作品のタイトルの日訳。たまにティナがこれを言ったりする。
この世界:“エデン”という皮肉めいた名で呼ばれる世界。本作品の舞台。
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