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月夜の誓い
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穏やかな夜空。
輝く星達が明日のワルツを踊り、風が木々たちと共に涼やかな調べを運ぶ。
夜の女神が闇のヴェールを空にかけ、太陽をそっと覆い隠す。
それは彼女が昼の神に恋焦がれ、夜の間だけの逢瀬を得るためだといわれている。
命あるものたちは眠りにつき、しんとした静けさだけがあたりを彷徨う。
風と、ちいさな虫たちだけが密やかな音楽を奏でている。
それらすべてが、愛しい。
そして、キレイだと思う。
淡く輝く月も、それに照らされて小さな微笑を浮かべて眠りにつく、彼女も。
愛しい、女性<ひと>。
この世界で一番大切で、何に代えても守りたいと思える人。
彼女がいたから、今の自分がある。
彼女がいたから、こうして微笑んでいる自分がある。
それもすべて、彼女がいてくれたからこそ――。
人に有らざる力を手にしたがために悲しみを抱いた。
絶望を知り、諦めを見つめ。
挫けそうに、自分に負けそうになった自分を信じてくれた。
自分でさえ、自分を信じられなくなっていたというのに。
それでも、彼女だけは信じてくれた。
だから――今という時が、あるのだろう。
この身が世界を滅ぼそうとした時でさえ、彼女は。
信じて――信じ続けてくれていた。
特別な力なんてない。
どんな力も持たない、ごく普通のひとなのに。
誰よりも、強いと思う。
何度涙を流しても、何度悲しい夢を見ても。
それは、それだけはかわらない。
「信じてるから」――そう言うその微笑みが、愛しくて。
その笑顔一つで、僕を幸せになれるから。
側にいるだけで、満たされていく。
この血に濡れた掌を抱いて、君を守ろう。
この力を持って、僕は君を守る。
ずっと、ずっと――夜空に永遠に輝く月に誓う。
今日この日、僕らを照らしてくれた月に。
安らかな一時を送ってくれた、全てのものに誓おう。
僕が持ちうるもの全てで、君を守ると。
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