あれから、もう2年も経っていたらしい。 自分の護衛獣に言われるまで気付かないなんて、驚きを通して呆れるしかない。 でも、その感情も薄く淡いものでしかない。 あの時。メルギトスとの戦いで、原罪<カスラ>を押さえ込むために姿を消した君。 君を待ち続けて、もうそれだけの時が経ってしまった。 俺は、その間――ずっと、望みのない再会を待ち続けている。 「もう……2年、か。それとも、まだ、なのかな……ネスティ」 聖なる大樹に手を当て、小さく呟く。 耳を澄ませば、どこからともなくいつもの口調で彼が『君は馬鹿か?』と言っているような気がする。 大事な親友であり、兄弟子である彼が、今は無性に懐かしかった。 今日は、久しぶりにみんなが集まるはずだ。 ただ流れ往く日々を過ごしていた俺だけど、それでもみんなに再び会えるのはうれしい。 それが、懐かしさと共に悲しみをもたらすのだとわかっていても。 「アメルも、みんなも……ネスを待ってる。だから、もう帰ってきてもいいだろ……?」 幾度、こうして呟き雫を零したことだろう。 かつての自分の不甲斐無さに憤り、自分を傷つけ、嘆いて……。 それでも、何も変わらない日々。 頑としてこの大樹の傍から離れようとしない俺を、みんなは理解し、助けてくれた。 バルレルは……ちょっと怒った顔をして、でもいっしょにいてくれる。 それが、とてもうれしい。 「なあ、ネス……」 でも、君がいないんだ。 笑い合えるはずの今なのに、そこに君がいない。 「……寂しいよ」 呟きと共に、ひとしずくの涙が零れ落ち、大樹の根に伝わる。 と、その瞬間、あまりに唐突に聖なる大樹は暖かな光を放った。 「な……これは!?」 ”――――……” 「……え?」 今、何か……声が聞こえた気がする。 とても懐かしい、昔よく聞いていた、彼の声が……! 「ネス……?」 半信半疑で、そして緊張に高鳴る胸を押さえ。 光が収まるのを待って、俺は大樹の放った光が集まっているところへと急いだ。 そこに何があるかなんて、わからないしわかりっこない。 でも、何かが俺を急き立てているんだ。 大切なものが、そこにある、と――! 「ネス――!」 「……マグ、ナ……?」 そこには、光と大樹に包まれるようにして、懐かしい青年が横たわっていた。 眠りから覚めるように目を開き、俺を見つめてくるネスティが、そこにいた。 俺は零れ落ちる涙をぬぐい、精一杯の笑みを浮かべた。 視界はすぐに歪んでしまうけれど、それでも、彼を見つめていた。 震える唇は、なんと言葉を紡げばいいのかわからない。 だから、俺はそっと手を差し伸べた。 「…………」 「…………」 ネスは俺の手を取り、そっと立ち上がる。 そのまま、じっと黙って俺達は互いを見つめ合った。 不意に、ひとつの言葉が脳裏に浮かぶ。 そう、彼に言うべき言葉は、これしかないじゃないか! 「……なあ」 もう一度、無駄とわかっていながらも涙をぬぐい。 後ろの方から集まりだしたみんなが駆け寄ってくる気配を感じながら、俺はもう一度笑みを浮かべた。 「おかえり、ネスティ」 それは、間違う事無き確かなキセキだった―― |