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+予定外の出来事+

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 ――どうしよう。


 ただ、頭の中で廻っているのはそれだけ。
 いろんな思考が浮いては沈んで、まともにモノを考えられない。


 ――どうしよう。


 顔が熱い。きっと、みっともないくらい真っ赤になってしまっているだろう。
 耳も、首も、ヘタをしたら手も、いつもより熱く感じる。
 普段よりずっと早い鼓動は、当分おさまりそうにない。


 ――考えたことがなかった。


 本当に? と、心の奥でささやく声がする。
 誰よりも近くて、誰よりも大切で、誰よりもわかり合えて。
 本当にそれだけだったの、と。

 先ほど、あまりに唐突に告げられた言葉が脳裏を駆け巡る。
 それは、彼女が思っても見なかったほど、溢れんばかりの喜びを引き起こす。
 その意味は、何よりも明白なもので。


 ――どうしよう。


 俯いた顔が、上げれない。
 視界に入るのは、自分の足。そして、少し離れて――彼の足。

 そうして、彼女はまた、途方にくれる。




 ――どうしよう。こんなの、全然予定してないじゃない……。




 *****




 ――どうしよう。


 ただ、頭の中で廻っているのはそれだけ。
 いろんな思考が浮いては沈んで、まともにモノを考えられない。


 ――どうしよう。


 まさか、こんな所でこんな時に言ってしまうとは。
 まったく、カケラでさえも予想してなかった。
 完全に、予定外の出来事だ。


 ――言ってしまった。


 その事を後悔するつもりはない。
 それを撤回するつもりもないから、そういう意味では構わないのだけれど。
 出来るなら、もう少し――別のタイミングでちゃんと言いたかった。

 好きだと。幼馴染みとしてではなく、一人の異性として。
 誰よりも近くて、誰よりも大切で、誰よりもわかり合えて。
 そんな存在、きっと他には存在しないから。


 ――どうしよう。


 真っ赤になっているだろう、顔に集まった熱が、冷めない。
 視界に映るのは、耳まで赤くして俯いている彼女の姿。

 そうして、彼はまた、途方にくれる。




 ――どうしよう。こんなの、予定外どころじゃないだろ……。




 *****




 たぶん、想いはどちらも変わらない。

 ただ、これから変わってしまうだろう関係に、少し戸惑って。

 そうしたいと思う心に、暖かなものを感じただけだから。



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<管理人のひとこと>

幼馴染みの二人の、告白イベント。
きっと何気ない日常会話の中で言ってしまったのでしょう。
そんな関係も、きっと、どこかに。

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