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+棘+

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 刺さった棘が、抜けない。




「……痛いな、やっぱり……」


 じくじくと感じる痛みを訴える胸元をきつく握り締め、呟く。
 でも、それが意味のないことだと知っている。

 だって、痛いのはソコじゃない。
 本当に痛いのは、その奥深くのココロなのだから。


「笑ってごかまして、か……」


 だって、それしか知らない。
 そうする他の方法を、知らない。

 それ以外の道など、知らなかった。
 それ以外の道など、選ばなかった。


「……はは、……」


 口から零れる笑いは、とてもとても乾いたもので。
 これではきっと、みんな心配してしまう。

 笑っていなきゃ、ダメなんだ。
 俺が笑えば、みんなも笑ってくれるから。
 じゃないと、ダメなんだ。


「アズリアにも、言われたな……そういえば」


 ずいぶん前のような気もする。
 いつも厳しい眼差しで、厳しい言葉を言って。
 そうして、まっすぐに進んでいた彼女。


「ちょっと、うらやましいって思ったんだよ、俺も」


 俺は、ダメだったから、と。
 そう呟いて、自嘲する。

 力を欲しがっていたのに、いざ、手に入れればそれはもう、この手にはない。
 いや、手に入れたのかもしれない。
 けれど、それは本当に俺が欲しかったものとは違う。

 違う、と。
 そう、感じた。


「……だいじょうぶ。きっと、また、笑えるから」


 棘は、抜けない。
 いつまでも、どこまでも。

 でも、俺は笑うから。


「だから……どうか」




 誰もが苦しまず、笑っていれば、それでいい。
 俺はどれだけ傷ついても構わないから。

 だから、どうか。


 みんなで笑っていられるように――。



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<管理人のひとこと>

ソノラに突っ込まれた後の、レックスの内心。
時期的には、……3話くらい?
レックスは好きだけど、序盤はきっとこんな人なのだと思う。

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