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+おかえり+

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 すべてが終わったという話が聞こえ出したのは、あれからずいぶんとたってから。
 ナナミは一人、キャロの街の外れに立ち、じっと空を見上げていた。
 夕闇に、空が茜色に染まっていく。


「……帰ってくるよね、ちゃんと」


 何よりも大切だった少年にはひどいことをした、と思う。
 自分が死んだと伝え、悲しみを抱えたままで戦い合わせて。


「ごめんね……ひどいお姉ちゃんで……」


 でも、それしか道がなかった。
 あの子がリーダーとして、人の上に立って戦っていくのなら。
 どうしたって足かせとなってしまう自分がいるのは、邪魔でしかないから。

 だから、ナナミは一人で待っている。
 すべてが終わって、彼ら二人がそろってここに来る日を。
 いつまでも、ずっと、ただひたすらに信じて待ちつづけている。


「信じてる、もん……」


 ひとすじ、頬からしずくが零れ落ちた。
 その瞬間、


「――ナナミ?」
「――……ッ!」


 背後からかけられた声に、ナナミはビクリ、と体を震わせた。
 カサリ、と響く足音は二人分。


 ああ。
 ちゃんと、帰ってきてくれたのだ……!


「ナナミ、なの……?」
「まさか……」


 おそるおそる、といったように近づく足音に、ナナミは微笑みを浮かべた。
 涙がとめどなく、頬を流れていく。

 言わなくてはならないことがある。
 教えなければならないこともある。
 でも、いま、彼らふたりに言うべきなのは――




「おかえりなさいっ!」




 満面の笑みで、そう告げること。



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<管理人のひとこと>

 幻想水滸伝2から、最後の再会のシーンです。
 なにげにここ、好きだったり。
 意外と書きやすかったですー。

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